話題の住友銀行秘史を読みました。
著者の國重さんは、僕が以前楽天で働いていたときの副社長の方です。ご挨拶程度はありますが直接の面識はありません。とにかく評判の良い方でした。
また、この本を読めばわかりますが頭が抜群に良い方です。
僕がまだ楽天で働いている頃に、いわゆる"英語化"が行われ、全体会議も全て英語で行われました。特に英語が得意ではなかったので半分以上は聞き取れなかった僕ですが、國重さんの英語だけは理解できました。
簡単な英語を選んで使ってくれているという印象でした。
そんな國重さんが、あのイトマン事件を大蔵省やマスコミにリークした張本人だったというお話。
まず、驚いたのが1つ。この本の話を僕の会社を担当している某銀行の若い子にしたところ「イトマン事件ってなんですか・・・?」と言われてかなり驚きました。その担当は仕事はできるし頭も良いです。きっと良い大学だと思います。
たぶん25歳くらいだと思うのですが、確かにイトマン事件は1990年の事件なので若い人の中では知らない人も多いのかも知れないですね。
なのでイトマン事件とはなんぞやということでWikipediaから引用させてもらいます。
イトマン事件(イトマンじけん)とは、大阪市にあった日本の総合商社・伊藤萬株式会社をめぐって発生した、商法上の特別背任事件である。戦後最大の不正経理事件である
余計わからないので僕の中で簡単に説明させて頂くと、
"許永中って人とその周りの悪い人たちが伊藤萬という一部上場してた大企業に取り入り、銀行から不正に融資させた金をじゃぶじゃぶ抜いてどっかに消しちゃった事件"
です。実際に、どこに消えたかは本当にわかっていないらしいです。
許永中という人が在日韓国人で韓国でも権力を持っていた人なので、そっちに流れたとか、日本のヤクザに流れたとかいろいろ言われています。わからないといっても3000億とも言われる大金なので、日本の政治家たちも少なからず絡んでいると言われていました。
これをリークしたのが國重さん(面識はないですが知ってる人)ということで、読まないわけにはいきませんでした。
物語は國重さんが残していた膨大な量のメモとともに進みます。そのため、全てが事実であると思われます。
しかし、この話は國重さん側から書かれている本なので、この本で悪く書かれている人たちの中にはおかしいと感じている人もきっと多くいるはずです。
僕の知るイトマン事件では許永中という人が完全な悪玉でした。この本の中でもそのように話が進みますが、國重さん側にも佐藤茂さんといういわゆるフィクサーが付いていたようでした。ネットで調べてもほとんど情報はないですが、イトマン事件が起きる前に住友銀行で起こった平和相互銀行事件という事件で重要な役割を果たした人のようです。
wikipediaによると、
この様に書かれています。良い人か悪い人かは別にして、とりあえず普通ではない人のようでした。
本の中でも、許永中と、その仲間でイトマン事件の悪の主役とも言える伊藤寿永光が、もしヤクザを使ってきたら俺がどうにかする、と佐藤茂さんが國重さんに言う場面があります。
この人たちと一緒になり裏側で動く國重さんはまさに"清濁併せ呑む"といった人なのだと思います。
本の内容は、まさにリアル半沢直樹で、銀行内部の悪い点を國重さんの視点から書きまくっています。
イトマン事件の内情を知りながら、なんとか秘密裏に済ませようとする人たちや、どちらに付こうか迷う人たちがいます。
その様子を國重さんは以下のように表現しています。
明日は雨が降らなければ晴れですね、晴れでなければ雨ですね、といったような。こうして時間だけが過ぎていく。
その人たちを少しずつ動かしていく國重さんの"政治力"は本当に見事だったと思います。
僕ならどうするか?を問いながら読みました。國重さんは内部告発をします。僕ならせいぜい銀行の上司に相談する、といった内部告発をすると思います。
しかし國重さんは大蔵省にイトマン社員からの手紙ということで内部告発をします。これを何回も行い、同時にマスコミを使いイトマンの不祥事を明らかにしていきます。
大企業なのでマスコミも大蔵省も中々扱いたがらないので、両方からじわじわと崩していきます。
その方法が本当にお見事です。
國重さんは、その後住友銀行で取締役まで出世しますが、今の楽天証券にあたる会社で社長をしていた際に楽天に買収され楽天の副社長になります。その後女性関係のスキャンダルがあり辞任し、現在はリミックスポイントという会社で代表をしているようです。
いろんな意味で普通の銀行員ではないですよね。戦国時代とかに生まれてみても天下を取ってたのではないかと思うくらいです。
中々ボリュームのある本ですが非常に読み応えのある本でオススメです。
では。